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2007年1月26日 (金)

『歌壇』2月号

歌壇賞が発表されている。受賞作の細溝洋子「コントラバス」は技術面では水準以上だと思うのだけど、こういうあたりさわりのない作風の受賞作って、どうなの?と、いじわるを言ってみたり。

 このままで曲がっていたい栞紐、本の半ばにへばりつきおり

 次々に芯が出てくるえんぴつの芯、と私を思う日のある

 夕立の過ぎて明るし探査機のようなボールが水辺に浮いて

 大丈夫、きっと跳べるとその人の吐いた煙がうすく広がる

 紐を引く電灯はもうここだけになって夜ごとに紐を引くなり

机の上で作っている短歌が多すぎると思う。読後感はすっきりとしているし、作品や作者に文句をつける気はありませんけれど。

むしろ次席の田中濯「フォトグラフ」に注目する。

 秋雨は芯まで雨だ むらさきの傘しばりつつ階段おりる

 若き日の写真をみればさびしくも鼻のかたちのまださだまらず

 雨どいに音の集まる気配してベッドの四足伸びはじめおり

 ひっこみはとうにつかなくなっている東京の朝 山は見えぬよ

 彼岸花もう容色の衰えて旧農学校雨の降りいる

 あさってのほうへ蹴り出すことふえて草サッカーの声まばらなり

 木が強く葉を茂らせているあたりより冷えおりてきておひらきになる

静謐な空間にときどき浮き上がる思いが、すがすがしい耳鳴りのように聞こえる。「ひっこみはとうにつかなくなっている東京の朝」や「冷えおりてきておひらきになる」という言い回しの凝り方も、その「凝り」自体が何かを伝えていると思う。

掲載作品では伊藤一彦、栗木京子、花山多佳子の歌がよかった。とくに伊藤「艶の玉の実」はいい。感じがよい、上品ないぶし銀というかんじ。

  鶴唳をききしと思ふこの近くゐるはずなきかききしと思ふ

 ゆふぐれの鈴蘭通り歩みつつ築地正子を探してゐたり

 妻あらぬ朝早く起き庭に行けばきよとんとしたり白き椿は

 危急種のウミスズメの保護訴ふる女子の生徒は海の匂ひせり

『ホットロード』は近所のブックオフになく、すこしジリジリとする。新刊で買ってしまったら堪え性のない子どもみたいなので、我慢しよう。

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